宮崎駿監督の「風立ちぬ」を見てきました

製作ドキュメンタリーを見て、見なければと思っていた宮崎駿監督の「風立ちぬ」を見てきました。行ったのは有楽町のスカラ座。初めて行きましたが、見やすい劇場でした。

冒頭の主人公・二郎が見る夢のシーンからとにかく画面が美しいです。特に風景の光の表現が凄く良くて、見ているだけで幸せになってくるくらいの映像でした。
主人公・二郎とヒロイン・菜穂子の出会い、挫折、再開と短い結婚生活が描かれます。零戦設計者の物語と思って見に行きましたが、設計についてはそれほど描かれず、どちらかというと恋愛要素の方が強いという印象でした。宮崎作品としてはかなり珍しいんじゃないでしょうか。

この映画では、飛行機の映画なのにほとんどの飛行機はうまく飛びません。途中で壊れて落ちます。私が見てきた宮崎作品(ナウシカラピュタ紅の豚など)では空を飛ぶシーンが印象的でしたが、この作品では「夢の中」では美しく飛行機は飛びますが現実は失敗続きです。それだけに、夢の中でカプローニ氏と一緒の空を飛ぶシーンの浮遊感が増している気がしました。それは思うままにならない「現実」とは正反対酔うような「美しい夢」という対比なのではないかと思います。「飛行機設計は美しい夢」というカプローニ氏の言葉に導かれるように、二郎は設計の仕事に没頭しラストシーン近くで二郎自身の「美しい夢」である九式単座戦闘機が空を飛ぶのです。このシーンの壮快感はそれまでの挫折によって強調されていると思いました。
その直後のシーンでは、大量の飛行機の残骸(たぶん墜落したもの)が表れます。夢の中のシーンですが、ここでまた二郎が挫折を味わっったということなのでしょう。でも、二郎のセリフ「はい、終わりはズタズタでした」はそれほど後悔を感じさせない気がするのです。それは自分のやることをやりきったからと感じました。

主人公・二郎が格好いいです。庵野さんが声優をやっていて、最初は凄く違和感があったのですがだんだんその「棒読み加減」が魅力的なってくるから不思議です。当時のインテリの格好いいこと!教養もあり世界を目指すその志の高さとか生き様が格好いいです。

設計のシーンも凄く興味深かったです。小道具としての計算尺が大活躍でした(特に冒頭の関東大震災のシーンでの使われ方!)。計算尺をつかって計算する姿が格好いいですね。計算尺使ってみたくなります。設計シーンに出てくる鉛筆も緑軸や茶色軸などあって、文具ファンとしては注目でした。鉛筆の種類とメーカーが気になる…。

見終わって、良い映画だなーと思った作品でした。映画館で見たこともあって静かなシーンでの音響(虫の音とか)が良かったので、もう一回映画館で見たい作品です。