裁判長!思いっきり悩んでもいいすか(北尾トロ、村木一郎監修、文春文庫)を読みました

裁判傍聴レポ・裁判長シリーズの北尾トロさんの著書です。今回は裁判傍聴ではなく、裁判員制度が題材です。
裁判員裁判の対象となる様々な裁判のケースを想定問題にして、それぞれの事件の量刑を決めていくという形です。対象となる事件は、事後強盗・連続強姦到傷・放火・殺人・傷害致死危険運転致死傷・虐待・死刑求刑事件・否認事件など様々です。
その罪の基礎的な知識問題から始まり最終的に具体的な事件問題が出題されるという形式で、裁判というものになじみのない人でも入りやすく工夫されていると思いました。
それぞれの事件はどうしようもなく悪質なものからしょうがないと思えるものまで様々で、実際の裁判というのもこういうものなんだろうなと思いました。本当に色々な状況の事件なだけに、量刑を決める時に自分自身の考え方というのが嫌でも露わになってきます。事件を起こした被告人の置かれた状況を理解するのことも難しいです。悪質な事件などは普通の人からは「そのようなことをやるのが理解できない」と感じることが多いでしょう。理解できない凶悪な犯罪だから、極刑(死刑)でいいのか?という単純な話でもないですし…。司法の場に「普通の市民感覚」を導入するのが裁判員制度の目的なのでしょうが、普通人には理解できない事件をどうとらえれば良いのかは、自分が裁判員に選ばれた時にものすごく悩むと思うのです。ましてや、無期懲役と死刑のどちらかに決めろとか言われたら、どうすれば良いのか…。できればやりたくはないですが、絶対にないとはいえないですからね。

私を含めて普通の人は刑事裁判と無縁であることがほとんどでしょう。そんな人がいきなり裁判員になったら困ります。そんな時のためにこの本を読んで、事件と量刑について考えたことがシミュレーションになった気がします。著者の北尾トロさんと一緒に悩んでいざという時に備えることができました。扱っている題材は難しいですが、いつもの北尾節で読みやすいです。お薦めです。