「おおかみこどもの雨と雪」を見ました

注)作品のストーリーをネタバレしています

時をかける少女」、「サマーウォーズ」の細田守監督の最新作「おおかみこどもの雨と雪」を見てきました。細田監督のオリジナル作品第2弾です。
東京に住む大学生の花が狼男と恋をしてその子供(おおかみこども)を育てる13年間を描いています。狼の姿に変わることのできる「おおかみこども」として生まれた姉弟を育てるために東京から富山の集落へ移住してからの生活がメインとなっています。

作品のテーマは「親子」です。子供が生まれた後、狼男の「彼」は事故で亡くなってしまいます。彼に託された子供を自立するまで育て上げる母親目線のストーリーが娘のナレーションで語られます。その頑張りには心を動かされます。でも、主たるキャラクターに感情移入する対象が見つけられなかったので、映画に没入できませんでした。未婚で子供のいない私にとって、ドキュメンタリーを見ているような感覚といったほうが正しいでしょうか。ストーリーや演出は素晴らしいし面白いと思うのですが、私にとって感情を動かされるという作品ではなかったです。一番好きなシーンは、村の頑固な老人が不器用に花に農作業を教えるシーンというのが、作品のテーマにシンクロできていないということでしょう。

「選択」というのも作品のテーマだと感じました。「狼」として生きるのか、「人間」として生きるのかという選択です。姉の「雪」は最初は狼寄りであり、弟の「雨」は最初は人間寄りで描写されています。成長するに従って周りとの関係性でどちらかで生きていくのかを決めることになります。母親の花は「雨」の選択を理解できないという描写があります。夢の中で父親が出てきて「自分の道を選んだからよかった」っていうシーンがあり、それまで必死に育てていた母親に変わって何もしていない父親が許すってのは、ちょっと引っかかりましたが…。男の子の考えって母親には理解しづらいってことなのかな?と思いました。男同士しか分からないというのはあるとは思うんだけど、良いとこ取りっぽく感じたのです。

本好きとしては、本が作中で重要な小道具として使われていたのも印象的でした。花は何かを始めるときに本で勉強して、学んでいくんです。その時の状況により、部屋にある本棚の本の背表紙が変わっていくという演出がされていました。本棚っていうのは持ち主のその時の状況が表れると思っているので、凄く印象に残った描写でした。全ての本棚シーンの映像をじっくり見たいなあ。どんなに月日が過ぎても同じ広辞苑だけは残っていて、確かに買い換えないよな〜と思いました(笑)。

作品中で描かれる花や草原、雪山など自然の描写が凄く美しいのです。実写とアニメーションを合成しているのかCGなのかは分からないのですが、実写映画を見ているかのように思えるくらいでした。この描写を大画面で楽しめたので、映画館に見に行って良かったです。

小学生からご年配の方まで観客層が幅広いのが印象的でした。サマーウォーズを見に行った時はもっと若い人ばかりだった気がします。親子テーマだからなんでしょうかね?

色々書きましたが、何度か見直したくなる良い作品だと思います。