のび太の恐竜2006 感想

 2年ぶりのドラえもん映画の新作です。かなり面白かったです。
以下は感想です。旧作&原作が好きなので、偏った意見かもしれません。
ネタバレ含みますのでご注意を。


 感想としては、映画が始った時点から思っていたのですが、「今風にリニューアルしているなあ」ということです。とにかく展開が早くて動く!密度が濃いせいか、途中で1時間くらいかと思っていたらまだ30分位だったり。とにかくハラハラドキドキと楽しめる映画ですね。

 クライマックスシーンは原作&旧映画と異なります。前半はほとんど原作&旧作と一緒でアップデートという感じだったのですが、後半は一転してオリジナルな味付けになり、展開が見えないのでついつい引き込まれてしまいました。特に印象的だったのが、画面の美しさ。ジュラ紀の風景が水彩的な感じの背景ですごく綺麗でした。そのせいなのか、映画館の問題なのか画面が白くて見にくいという場面が結構あったように感じました。


冒頭からハリウッド映画の導入部のような恐竜の登場。子供には刺激強いんじゃないかと思ったのですが、今の子供は慣れているのかも。黒マスク(ピー助をつけ狙う悪役)は船越英一郎だったのですが、これが見事にハマっていました。でも原作に比べて作画がリアルで(A先生風?(笑))、かなり恐い感じでした。ちょっとドラえもん他の絵との違和感はありますね。ピー助の誕生シーンはじっくり描かれていて、感動的です。雨の中のび太を見舞うシーンもじっくり描かれています。
再度ジュラ紀に戻ってからは、まさに見せ場の連続でみていてぐいぐい引き込まれます。恐竜の描写も現代風で、ティラノは低姿勢だし、竜脚族は動き早いし。この辺は、常に最新の学説を取り入れていたという藤子・F・不二雄先生の姿勢も伝わっているなという感じでした。ジャイアンが「俺歩いても良いぜ…」っていうシーンは、ぐっと来ましたねえ。


原作にないシーンですが、印象に残ったシーンもあります。
1.パパのシーン。
 卵を温めるという行動に出るのび太の様子を見に来たパパが、机の上の「恐竜の本」をみて、自分も子供の頃恐竜に夢中になったというエピソードを話すシーンです。パパの登場シーンはほぼここだけですが、のび太を見守るパパの暖かさみたいな部分が出ていて「ジ〜ン」と来てしまいました。
2.マスコミ描写
 また、ピー助探索シーンでのマスコミの描写がリアルだったのも印象的です。旧作は、明日ダイバーが潜るというニュースだけでマスコミの直接的な表現はないのですが、今回は「群がるマスコミ」が描かれていました。この辺が25年前と比べて、大きな事件にはマスコミが群がるというのが当たり前になってしまったことの現れなのかなと複雑な思いになりました。


気になった点をいくつか。
 道具を出した時に解説がないのが物足りないです。タケコプターとかは良いと思うのですが、海で泳ぐシーンで登場する「エラチューブ」、「深海クリーム」、着せ替えカメラとか、夜のシーンで登場する「キャンピングカプセル」などはきちんと説明して欲しかったと思います。子供にとっても分かりにくいと思うんだけどなあ。すべての子供が原作読んでいるとは限らないですし…。

 ラジコンで敵の目を逃れるシーンなのですが、下準備のシーンがないので、すごく唐突な感じがしました。ラジコン粘土という道具が好きなので、出てこなかったのが残念。
 ラストシーンが、ティラノの攻撃&タイムパトロールの活躍ではなくて、川の氾濫で基地が壊れてしまうというもの。これはちょっとご都合主義な感じを受けました。「氾濫くらいで基地壊れる?」っていうのと、ドラえもん達だけで敵を捕獲していたり、それをタイムパトロールが把握していなかったり。ラストシーンもタイムパトロールの助けをかりて帰還ではなくて、自分たちで歩いて行くというもので、その前のシーンで「道具全部流しちゃった」といっていたので、「タイムマシンもなくて行ってどうなるの?」「小さくしたピー助をどうやっておおきくした?」という点が不明。結局タイムマシンはあったし、ピー助もなぜか大きくなっていたりしました。意味不明なセリフだと思うんですよね。原作と異なったアプローチで、スタッフのやる気が感じられたのですが、原作とアプローチを変えるってことを意識して、説得力なくしてはしょうがないと思うんですけどね。


一番気になったところです。
原作のラストの回想シーンがアニメとして描かれていないのが残念。冒険から帰ったのび太が、部屋の中のボールをみて、ピー助のことを回想するという名場面です。原作のコマを使用して描写していましたが、ここはきちんとエンドロール後にアニメとして描いて欲しかった。当然そうなると期待していただけに、がっかりしてしまいました。私はこのシーンに思い入れがあるのでそう思うのかもしれませんけど、ラストがすっきりしないまま映画館を出た気分になってしまったのがホントに残念です。ここで泣こうと覚悟していたのに…。

気になったシーンもありましたが、正当なリメイクという感じで、スタッフの気合いも入っていてすごく楽しめる映画だと思います。一緒に見ていた子供たちも楽しんでましたしね!25年前にみた大人も楽しめると思いますよ。


見終わった後のおまけ映像で、「来年も見に来てね!」といっていました。「じゃあ、宇宙開拓史2007」か?って思ったのですが(笑)、25年それを続けられても嫌なので来年はぜひオリジナルでやってほしいと思います。