まっすぐ進め(石持浅海、河出文庫)を読みました

書店で一目惚れした美しい女性。彼女は左手首にいつもふたつの時計をはめている。その謎とは…。

日常の謎もの」の恋愛ミステリです。
石持浅海は提示された事実から論理的な推理を展開する作風の作家ですが、この短編集も同様の趣向です。今作品は、いつもより恋愛小説の要素が多いかったです。謎を解き明かすことが主人公カップルの関係に影響を与えることからそう感じるのかもしれません。
主人公・川端直幸の推理によって提示される謎の真相は、悲しい事実のことが多いです。ですが、その残酷な真実を解き明かすまっすぐな思考が彼女である高野秋には必要であり、直幸こそが秋にとっての支えとなる人だったのです。
辛い真実が多い中で、友人が婚約者の亡くなった父親から贈られた傘の謎を解く「晴れた日の傘」のエピソードが心温まる話でした。最終話の前にこのエピソードを持ってくる構成が素晴らしいと思います。