まほろ駅前多田便利軒(三浦しをん、文春文庫)を読みました

架空の街「まほろ市」で便利屋を営む多田とそこに居候することになる高校時代の同級生行天が様々な依頼を受け、トラブルに巻き込まれていく話です。長編ではなく連作短編の形式ですが、いろいろな依頼を受けて物語が進んで行くのは便利屋という職業の物語には合っていると思いました。
まじめな多田と得体の知れない行天の掛け合いが面白く、周りのキャラクターも強烈な人が多くてバタバタした話が続きます。スピード感のある展開に、ハラハラしながらぐいぐい引き込まれました。物語が進むにつれ、多田・行天の過去が明らかになり一つのテーマが浮かび上がってきます。「人は過去を清算して、やり直せるのか?」ということ。悲しい過去を忘れて生きることはできなくても、前に進むことはできるということです。この作品のラストはそれを象徴しているシーンだと思います。
三浦しをんさんの小説を初めて読みましたが、読みやすい文章の中に胸に突き刺さる言葉があったりして読んでいてはっとさせられることが多かったです。他の作品も読んでみたくなりました。

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)