悪の教典(貴志祐介、文春文庫)

学校の先生がサイコパスだったというお話です。主人公の蓮実聖司は有能で生徒にも人気のある私立高校教師。しかし彼は他者との共感能力に欠けた生まれついてのサイコパスであり、自分の都合により障害となっている人物をためらいもなく排除していきます。

前半のモンスターペアレントの殺害や同僚の教師の弱みを握った脅迫などの策略は綿密な計画があり、蓮実の怖さと悪としての魅力に魅了されます。映画で話題にもなった後半の学校での生徒虐殺シークエンスは、生き残りをかけた蓮実と生徒の知恵比べの部分も行き当たりばったりな感じがしてしまい今ひとつ乗り切れませんでした。リアリティを求めているわけではないですけど、前半と後半の思考・行動のブレが気になってしまったのでした。
ホラー小説としては面白いと思うのですが、そのあたりが気になってしまって「凄い」って感じられなかったのはちょっと期待外れだったかなぁ。

悪の教典〈上〉 (文春文庫)

悪の教典〈上〉 (文春文庫)

悪の教典〈下〉 (文春文庫)

悪の教典〈下〉 (文春文庫)