男たちは北へ(風間一輝、ハヤカワ文庫JA)を読みました

東京から青森までを自転車でツーリングする中年男が自衛隊の陰謀騒ぎに巻き込まれる話です。
主人公はアル中の中年グラフィックデザイナー桐沢風太郎。自衛隊の機密文書を拾ったことから騒動に巻き込まれます。この主人公桐沢の男臭さがたまらないです。また、道中で出会う家出少年の成長も本作の読みどころです。旅を通じて少年から大人へ変わる姿にグッときます。文書奪還任務に当たる尾形三佐も魅力的な人物です。彼は自衛隊の中にいてもどこか冷めていて、組織を冷静に見ているところがあります。その彼が桐沢に出会って行動を共にした後の行動が格好いいのです。男の友情に燃えます。

作者は執筆あたり「同じスケジュール・装備で東京青森間の自転車旅行を実施した」と巻頭にあるように行程の描写が細かく、一緒に自転車旅行している気分になれました。特に道について細かく描写されていて、特に坂について語る場面が多くでてきます。自転車乗りにとって坂は特別なものですし、実際に走ったものだけが語れるリアルな描写に一緒に坂を登った気になります。
自転車好き、ハードボイルド好きなら満足できる小説だと思います。

男たちは北へ (ハヤカワ文庫JA)

男たちは北へ (ハヤカワ文庫JA)