狼は瞑らない(樋口明雄、ハルキ文庫)

山岳警備隊の隊員が主人公の山岳冒険小説です。

元SPの佐伯鷹志は、長野県山岳警備隊の隊員として遭難者の救助任務に当たっていた。SP時代に知り得た警察と正解の闇を知った佐伯を狙う警察上層部の『掃除屋』が送り込まれる。大型の台風が猛威をふるう山の中で山岳警備隊と暗殺者集団の死闘が繰り広げられる。

暗殺者の設定自体はあまりリアリティは感じられらないのですが、山岳警備隊の救助活動の描写が非常にリアルで詳細に書かれています。山岳警備隊の命を救うことに対する誇りが、救助行動時の隊員の行動から伝わってきます。暗殺者達の人物造形が薄い(それが不気味な雰囲気を醸し出しているのですが)のに対して、隊長をはじめとする山岳警備隊のメンバーのそれぞれの個性が際立っていて感情移入できました。新人の杉浦隊員がこれまでの自分を捨てる選択をした後、最後にこの山で生きていくことを決意するのですが、隊員の誇りが継承されるようで静かですが熱いシーンで印象に残りました。面白かったです。
真保裕一の「ホワイトアウト」や映画ダイハードとかのアクションが好きな人なら楽しく読めると思います。お薦めです。

狼は瞑らない (ハルキ文庫)

狼は瞑らない (ハルキ文庫)